分科会「じぶんじしん・まち・えいぞうについて in よどや」報告

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 松崎駅から「たみ」に至る道程の途中にある「よどや(ギャラリーよどや)」。「いきいき直売よどや」や松崎自主防災会事務局として使われ、現在では松崎ゼミナールの教室にもなっており、幅広い年代の人々に利用されている交流施設のようだ。本分科会では、村上大樹リーダーのもと、鳥取大学生4名、立教大学生4名(1名欠席)、ICU生1名の計9名の発表が「よどや」で行われた。

 発表内容の一つの傾向として、「伝統工芸」「写真」「映画」「音楽」とジャンルはさまざまだが、芸術を対象としたテーマが多かったことだ。そこで交わされた議論は以下のようなものである。一つは「観光化」の問題で、地域の芸術イベントは「観光化」によって多くの人々を招くことができるかもしれないが、他方でその土地の伝統やコミュニティの破壊につながるのではないかという議論。また、「観客」や「参加者」についての話題が上がり、近年の参加型芸術イベントの増加について意見が交わされ、K-POPライヴにおけるファンによる撮影行為、「コナン」など映画館における応援上映2.5次元ミュージカル専用劇場の登場などの事例が挙げられた。この点について、イベントの参加者は、必ずしも運営側の意図とは異なる行為で盛り上がることがあり、それらをどの程度許容すべきか、取り締まるべきかという議論が交わされた。

 発表内容のもう一つの傾向としては、「じぶん」を動機としたテーマだ。「化粧」について、「たいせつなもの」についてなど、「じぶん」を動機に研究を出発しつつも、結果として他者へと関心が向かうものが多かった。こうした傾向の中でも異彩を放ったものとして、自分の失恋経験を小説(4万字!)および脚本化し映画製作を試みるものと、Twitter裏アカウントを利用して出会った人々に取材をしてDVや不登校援助交際などの人生を聞く、という二つの発表であった。ショッキングな内容を含むため聞き手の反応が気になったが、思いのほか学生たちは共感していたのが印象的であった。後者は、岸政彦氏の『断片的なものの社会学』(朝日出版社、2015年)の「ふつう」の人々の語りを聞くという研究方法から着想を得たようだが、別の発表者にも応用可能なアプローチであるといえるだろう。

 このように今回の分科会では、「じぶん」を契機として上手く研究に没入した学生が多かったことが良かったように思う。しかしながら、「じぶん」とはなにかを探求することで、研究への手がかりが必ず見つかるとは限らない。むしろ「じぶん」とはなにかを問うことで余計に「じぶん」がわからなくなることもあり得るだろう。その場合は、たとえば「にんげん」を考える場合、むしろ「非にんげん」について考えることで逆説的に「にんげん」の輪郭が浮かび上がることもあるように、「じぶん」を切り離して「研究対象」を考えることも一つの手であると考える。

 

レポート:筒井宏樹

鳥取大学地域学部 筒井宏樹ゼミ
美術史の研究室です。ゼミ生は巨匠画家を研究する人から、鳥取や地元の美術家を研究する人がいます。また美術だけでなく、音楽、マンガ、イラスト等を研究する人もいます。さらに、卒業制作としてアニメーション、音楽発表等の実践に取り組む人もいます。現在のゼミ生は岡本正文君。絵を描いたり、パウル・クレー研究をしています。岡本君が製作したLINEスタンプ「なんでも拾うよグローブちゃん」「角張うさぎちゃん」は只今販売中。

 

分科会「まちづくり・おまつり・おんがくについて」in 梅や 報告

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 本分科会は鳥取大学の松本凌がリーダーを務め、週1のカフェ営業や買い物支援の活動をおこなう地域コミュニティの拠点「梅や」で開催された。参加者は鳥取大学生3名、立教大学生6名に、三八市実行委員会および「梅や」の運営に携わる上山梓さんを加えた10名。「梅や」の関係者や近隣住民の方々も発表を聴きに来てくださり、白熱した議論が展開された。

 全体の傾向として、自分自身の生い立ちや地元に関わる研究テーマを掲げる者が多かった。幼少期に親に連れられて毎年通った「しゃんしゃん祭り」、地元のクラブに所属して参加した「いいだ人形劇フェスタ」、親戚が益子焼の窯元を継いだことをきっかけに関心を持った益子町についての発表など、身近な伝統文化の魅力を伝えると共に、人口減少と後継者不足、行政と地域の協働がどうあるべきかといった差し迫った課題が示された。

 加えて、研究テーマである「鹿野祭」に実際に参加する、路上パフォーマンスを実施してその聴衆に聞き取り調査をおこなう、ライブハウス経営の研究をして自らのバンド活動に活かすなど、発表者自身が一人のプレイヤーとして芸術・文化活動を実践しつつ、同時並行で研究を進めていくのだというスタンスも目立った。いずれも己の身体を現場に介在させているからこその強度があり、研究を進めることの必然性や切実さもじゅうぶんに感じられた。

 しかしそうした経験や実感を「研究の言葉」に翻訳することは決して容易ではない。同じコミュニティ内ではざっくりとしたニュアンスで伝わる言葉も、文脈を共有しない相手には理解されないだろうし、思い入れを持てば持つほど冷静な対象化も困難になるだろう。

 例えば90年代から現在に到るまでのヴィジュアル系の変遷を研究する発表者は、「ヴィジュアル系」を厳密に定義づけることの不可能性を課題として挙げていた。あるいは色彩と言語、音声と言語の対応関係に関心を持つ発表者も、「白」という一語のうちに異なる様々な色彩が含まれていることを指摘していた。彼らに限らず発表者みなが研究の出発点に据えるべき、重要な視点であると言えよう。

 発表が一巡した後、地域住民の方から、どの研究も一般公開して良い水準に達していないという厳しい批判が寄せられた。本分科会が研究の成果報告ではなく、これから着手する研究テーマの発表であるという趣旨が伝わっていなかったための誤解であったが、司会を担当していた松本を中心として批判に応え、互いの認識の齟齬を埋めるべく対話を試みる学生の姿勢は立派なもので、教員の助け舟を必要としなかった。

 他方で、そうした対話が成立したのはそもそも地域住民の方々が分科会の開催に理解を示し、当日会場にまで足を運び、学生の言葉に真摯に耳を傾けて下さったからこそである。そしてその背景には、「梅や」や「たみ」が松崎という土地で時間をかけて築いてきた関係と信頼があるのだということを忘れてはならないだろう。「梅や」を運営する上での喜びや苦労、生じる課題や責任について率直に語る上山さんの言葉は、今後参与観察的な研究を進めていくであろう学生たちの心に重く響いたのではないだろうか。

 

レポート:佐々木友輔

鳥取大学地域学部 佐々木友輔ゼミ
視覚メディアと表現に関わることであれば何でも、興味・関心の赴くままに制作(作ること)と研究(書くこと)を続けられる場を理想とする研究室です。現在所属しているのは、4年の村上大樹君。視覚メディアを用いての私小説的表現について研究・実践しています。昨年度は古典的ハリウッド映画の脚本の構造を学んだり、鳥取発の地域映画制作企画に参加していました。卒業制作では短編映画を制作しています。

 

分科会「アートについてin 汽水空港」報告

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 あえて定義からはじめてみたい。「アート(英語:Art)とは、芸術・美術など間接的に社会に影響を与え得るものである」。これはグーグルで「アート」という言葉を検索すると出てくるWikipediaの定義である(強調は引用者)。わたしはアートの専門家でもなければ、この定義でいうところの「芸術・美術」を中心とする実践者でもない。しかし、分科会の議論を終えた直後、たまたまこれを読んだ時に「なんてつまらない定義なのだろう」という違和感を覚えたのだった。以下、この瞬間に感じられた「アート」の定義をめぐるギャップについて述べることで、本分科会の内容報告に代えることにしたい。

わたしの参加した分科会は、7月末にリニューアル・オープンしたばかりの古書店「汽水空港」で行われた。テーマはとてもシンプルで、ただ一言「アートについて」と題されていた。具体的にはパウル・クレーの作品分析、美術展のレジャースポット化、音楽を使ったアウトリーチ活動、震災仮設住宅でのアート実践といった、アートという言葉から想起されやすいトピックや近年の動向のみならず、ポルノグラフィ、ゲーム音楽、ファッション、防災無線等から流れるチャイムといった身近な文化の現代的な変化も話題となった。

参加者は(ほぼ)初対面同士ということもあり、全体を通して最後まで「ぎこちない」議論であったことは否定できない。しかし、迷いや葛藤も含めた自分自身の関心を言葉にして他者に伝えようとする意志と、それを受け止めようとする姿勢がその場には徐々に立ち現れていったように思える。議論の合間には汽水空港店主の森哲也さんがDIYで店舗を(再)オープンするまでの「四苦八苦」、そして書店を開く上での「幅と揺らぎ」の重要性について語って下さった場面もあった。それにより、汽水湖東郷池)を目の前に再び立ち現れたこの「空港」のみならず、真新しい本棚に並べられた古書たちから伝えられる無言の、しかし無数のメッセージも参加者に感じられる場所になっていたに違いない。

この分科会は、こうした場/場面/場所の力が確かに感じられるものだった。だからだろうか。報告者たちが「アート」をめぐって口にしていたのは、冒頭に引用した「間接的」とか(自分自身と切り離され遠く感じられる意味での)「社会」といった言葉を用いた定義では一切なかった。それは例えば「パッション」(情動)の感じられる「自己表現の場」であったり、それを他者と「共有するもの」であるという。これは「自己」が関与する意味で何よりも「直接的」であり、かつ「共有する」営みを伴うという意味で、「社会」というよりも「共同体」や「共同性」という次元に限りなく接近している定義のように思える。

ここには冒頭のWikipediaの定義を反転させたような地点に、参加者の観点が置かれていることが窺えるだろう。もちろん、それもひとつにまとめられるほど、議論内容が明確になっていたわけではない。だが、限られた時間とはいえ、参加者間で「アートとは、自分自身を『出力(アウトプット)』する方法をtryする場所である」、いうオリジナルな定義の萌芽にまで議論が至れたことの意味は極めて大きいとわたしには思われる。なぜなら、この定義は、この分科会そのものが何だったのかという場(場面/場所)の理解にも結び付くのみならず、近代を通じて「芸術・美術など」として専門化され、自らの手から遠くなった「アート」を、ふたたび自分自身(=わたし)の位置から直接的に捉えなおし、他者ともに実践しなおす技法の萌芽としても考えられるからである。だが、当日に議論できなかったことの課題も多くあるだろう。それは報告者の卒業研究や来年の?「にんげん研究大発表会」での議論に期待したい。

 

レポート:稲津秀樹

鳥取大学地域学部 稲津秀樹ゼミ
新任教員なので、ゼミも1年目です。卒業生はまだいないので、ゼミ生とテーマやフィールドを耕している状態です。担当者自身は昨年、研究仲間と『社会的分断を越境する―他者と出会いなおす想像力』という本を出しました(青弓社2017年)。構造化された社会問題を生きる当事者/他者の「しんどさ」と向き合い、それでも共に生きようとする人びとの意志や実践、表現や想像力を学び続けたいと思っています。

 

 

にんげん研究大発表会2018

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私たちの幸福は、大きな世界に関わる経済発展だけではなく、にんげん同士がつくる生活の中にあるのではないでしょうか?なんとなく遠く感じる「社会」を帰る前に、にんげん一人一人の違いを認め合い、一人一人が身の丈にあった生活をつくり、地域に関わっていくことが、幸福になるための近道と考えます。本発表会は、「文化」や「地域学」を学ぶ鳥取大学立教大学の学生たちや研究者、一般の方々などのさまざまなにんげんが集い、自身の身体で経験し得た知性とも言える「研究」を発表します。生活者の視点からみつめる社会のあり方や未来を生きる若者の価値感覚に触れ合うことで、「だれか」の目を借りて、一個人が抱える「となり」の世界をのぞいてみましょう。老若男女が集い、みんなのめくるめく研究を語らうことで、身体が動き出すようなわくわくする時間を共に過ごしませんか?是非とも、ご参加ください!

 

日時:2018.8/4(土)13:00〜20:00、8/5(日)10:00〜16:00 ※開場は30分前

受付会場:たみ(鳥取県東伯郡湯梨浜町中興寺340-1)

その他イベント会場:汽水空港、梅や、よどや、旭区公民館、湯梨浜町商工会

 

参加費:1日1,500円(二日通しは2,000円)※学生・町内の方は無料

定員:40名(要予約/定員に達していない場合は当日受付可能)

 

お申し込み・お問い合わせ:

にんげん研究会(担当:蛇谷りえ)

ningenkenkyuukai*gmail.com *を@に変換してください。 

0858-41-2026(たみ)

 

 

タイムスケジュール

2018.8/4(土)

12:30 開場・受付 会場:たみ

13:00 開会のあいさつ

13:30 「なんちゃって、にんげん研究学会!」会場:汽水空港、梅や、よどや

3つの分科会に別れ、文化や社会学を学学生と一緒に「研究」を発表&ディスカッションします。

17:00 発表終了

18:00 「振り返りながら、楽しく交流会」会場:旭区公民館 会費:1500円

各分科会でどのような話題があがったのでしょうか?食事をしながら、交流を深めます。

20:00 終了

 

2018.8/5(日)

9:30 開場・受付 会場:たみ

10:00 「松崎ドラマチック物件ツアー」

集合場所:たみ 案内人:三宅航太郎

松崎地区にある地域住民が集う拠点やお店、家の中までまちあるき。この町の営みをのぞいてみましょう。

11:30 お昼休憩

13:00 「地域に関わるための○○○をつくる」〜たみの実践を事例に〜

会場:湯梨浜町商工会

発表者:五島朋子、蛇谷りえ+三宅航太郎

コメンテーター:モリテツヤ、他地域住民のみなさん

司会:小泉元宏

地域に関わるには、何が必要なんだろう?「たみ」をテーマに、さまざまな発表者の視点を手がかりに見えてくるものは一体何か、探してみましょう。

15:00 「はじまってしまった...にんげん研究」

会場:湯梨浜町商工会

発言者:佐々木友輔、竹内潔、稲津秀樹、他全員

二日間をとおして、発見したこと・もっと話したいことをみんなで語り合います。

16:00 閉会のあいさつ

 

発表者大募集!

あなたの「研究」を発表してみませんか?

生活の中で日々工夫をしたり、苦労している「研究」を発表してみませんか?

※発表受付締め切り:7月31日(火)

※別紙にある「にんげん研究発表者応募シート」をご覧ください。

 

参加申し込み 締め切り 8月1日(水)24時まで

下記の内容を明記の上、電話あるいはメールでお申し込みください。

(1)お名前 (2)人数 (3)電話番号 (4)所属 (5)交通手段

(6)8月4日の夜の食事会参加の有無(会費:1500円※飲酒は別途精算)

(7)研究発表をする・しない(発表を希望する方は、別紙「研究シート」を記入の上、7月31日(火)までにご提出ください)

詳しい応募概要は、下記の「にんげん研究発表者応募シート」をご覧ください。

データをお渡しできますので、一度お問い合わせください。

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発表者リスト(順不同)

鳥取大学地域学部 五島朋子ゼミ
アートマネージメントを学べる研究室です。とは言いつつも、まちづくり、伝統芸能舞台など多くの話題で話をで盛り上がっています。現在ゼミ生は一人です。そんなゼミ生の卒業論文のテーマは「祭」。アートマネージメントと祭との関係性も模索しつつ、様々な知識を駆使して研究を進めています。ゼミ生が少ないとはいえ、自由に活発に多くの人と交流できる研究室です。(ゼミ生 松本 凌 記)
 
鳥取大学地域学部 稲津秀樹ゼミ
新任教員なので、ゼミも1年目です。卒業生はまだいないので、ゼミ生とテーマやフィールドを耕している状態です。担当者自身は昨年、研究仲間と『社会的分断を越境する―他者と出会いなおす想像力』という本を出しました(青弓社2017年)。構造化された社会問題を生きる当事者/他者の「しんどさ」と向き合い、それでも共に生きようとする人びとの意志や実践、表現や想像力を学び続けたいと思っています。
 
鳥取大学地域学部 竹内潔ゼミ
別名「創造地域論ゼミ」。教員は茨城県で公務員として文化政策に携わっていましたが、研究者に転身。鳥取大学には2017年に着任し、ゼミは2018年に立ち上がったばかりです。現在のところのゼミ生の関心は、文化の地域間格差音楽アウトリーチ、伝統文化・伝統工芸による地域づくりなど。それぞれが関心のあるテーマから、文化や芸術となってあらわれるにんげんの創造性と地域との関係について研究していきたいと思っています。
 
鳥取大学地域学部 筒井宏樹ゼミ
美術史の研究室です。ゼミ生は巨匠画家を研究する人から、鳥取や地元の美術家を研究する人がいます。また美術だけでなく、音楽、マンガ、イラスト等を研究する人もいます。さらに、卒業制作としてアニメーション、音楽発表等の実践に取り組む人もいます。現在のゼミ生は岡本正文君。絵を描いたり、パウル・クレー研究をしています。岡本君が製作したLINEスタンプ「なんでも拾うよグローブちゃん」「角張うさぎちゃん」は只今販売中。
 
鳥取大学地域学部 佐々木友輔ゼミ
視覚メディアと表現に関わることであれば何でも、興味・関心の赴くままに制作(作ること)と研究(書くこと)を続けられる場を理想とする研究室です。現在所属しているのは、4年の村上大樹君。視覚メディアを用いての私小説的表現について研究・実践しています。昨年度は古典的ハリウッド映画の脚本の構造を学んだり、鳥取発の地域映画制作企画に参加していました。卒業制作では短編映画を制作しています。
 
立教大学社会学部 小泉元宏ゼミ
立教大学社会学部の3学科・1コース(現代文化学科・社会学科・メディア社会学科・国際社会コース)に所属する学生を中心に構成される研究室です。国際基督教大学ICU教養学部の学生らも活動に参加しています。美術・音楽・映像・演劇などのアートや、現代文化・ライフスタイル、コミュニティ形成などのテーマを、社会学文化研究のアプローチから捉える研究を展開しています。「特別な」人たちだけのものと思われがちなアートや創造活動の、「当たり前」に思えるいまの社会における意味を考えています。
 
モリテツヤ 汽水空港店主
汽水空港店主兼農夫。AB型、蟹座。幼少期に経験したインドネシア北九州の環境やカウンターカルチャーなどの影響を受けて、自分の手で自給できる生活をつくるために2011年に鳥取へ移住。2012年に鳥取県東伯郡湯梨浜町に巡り会い、2016年に古本屋「汽水空港」を開業するが、思いとどまって再び改装作業。暗黒時代に嫁のアキナに支えられて、2018年7月に無事にリニューアルオープンをする。
 
三宅 航太郎、蛇谷 りえ うかぶLLC 共同代表
2012年に鳥取県東伯郡湯梨浜町に設立した「合同会社うかぶLLC」。三宅、蛇谷は共同代表を務める。主に宿と飲食が併設したスペース「たみ」(湯梨浜町,2012〜)、「Y Pub&Hostel」(鳥取市,2016〜)の運営しながmら、グラフィックデザインの制作、鳥取大学や「HOSPITALE」プロジェクトのマネジメント、アートディレクションなど、多岐にわたる活動をする。
 

企画主催 にんげん研究会

2012年に鳥取大学地域学部の学生らとゲストハウス&シェアハウス&カフェ「たみ」を運営するうかぶLLCで立ち上げた研究会。2013年以降、鳥取大学地域学部の複数のゼミなどが参画し、合同ゼミとしてゆるやかに活動している。地域社会の中でひとりの「にんげん」がどのように活動し、いかにして仲間を増やし環境をつくるのかについて、生活する人々の視点で、読書会やトークイベント、研究発表会などを行う。2016年から「地域と文化のためのメディアを考える連続講座」、2017年から「地域社会の記憶と文化のためのメディア・プロジェクト」を始動する。

 

 

主催:

にんげん研究会

鳥取大学地域学部五島ゼミ・佐々木ゼミ・稲津ゼミ・竹内ゼミ、立教大学社会学科小泉ゼミ、うかぶLLC)

共催:鳥取大学地域学部附属芸術文化センター

人口希薄化地域における地域創生を目指した実践型教育研究の新展開(戦略3-1)連携事業

にんげん研究会『聞く』からはじまるコミュニケーション〜「ハッピーアワー」上映会&トークショー

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「ハッピーアワー」上映会

2018年8月18日(土)・25日(土)
開場時刻 11:30 上映開始 12:00 上映終了 17:30
※上映時間:5時間17分/途中休憩あり
会場 鳥取県立博物館 講堂(鳥取市東町2丁目124)定員:250名
駐車場台数に限りがありますので、できるだけ公共交通機関をご利用ください。
チケット(当日券のみ・予約不要):2000円

▲各種割引あります!(割引は併用不可)
・学生割(要学生証提示)400円引
・ペア( 2人以上)割 一人200円引
・シニア割(50歳以上)200円引
トークショー参加割 200円引

 

映画『ハッピーアワー』公式サイト

 

 濱口竜介 RYUSUKE HAMAGUCHI
1978年、神奈川県生まれ。 2008年、東京藝術大学大学院映像研究科の修了制作『PASSION』が国内外の映画祭に出品され高い評価を得る。その後も4時間 を超える長編『親密さ」、東日本大震災の被害者へのインタヴューから成る 『なみのおと』『なみのこえ』、東北地方の民話の記録『うたうひと』(共同監督:酒井耕)、染谷将太を主演に迎えた「不気味なものの肌に触れる」を監督。2015年に『ハッピーアワー』を発表し、ロカルノ、ナント、シンガポールほか国際映画祭で主要賞を受賞。一躍その名を世に知らしめた。第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選ばれた最新作『寝ても覚めても』は9/1全国公開。

  

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濱口竜介監督×出演者トークショー&交流会
「人と出会って、自分をみつける」
インタビュー形式で出演者の皆様にお話していただきながら、映画『ハッピーアワー』の裏側にある「聞く」ことによって生まれるコミュニケーションについてお伺いします。

2018年8月19日(日)
開始時刻 15:00 終了 17:00 交流会 18:00~(会費2,000円ドリンク付)
会場:Y Pub&Hostel(鳥取市今町2-201)
参加費:500円+1drinkオーダー
定員:40名(要予約)

司会:村上大樹+松本凌(鳥取大学地域学部)
登壇者:濱口竜介監督、川村りらさん(純役)、出村弘美さん(日向子役)、坂庄基さん(風間役)、久貝亜美さん(淑恵役)、田辺泰信さん(栗田役)、殿井歩さん(葉子役)、椎橋怜奈さん(こずえ役)

 

予約受付
Y Pub&Hostel
電話 0857-30-7553
Email mail@y-tottori.com
お名前・人数・トークショー/交流会の参加有無をご連絡ください。

 

なぜ今、この場所で『ハッピーアワー』を上映するのか?

言葉を聞いて、相手を受け止める
僕たちが運営するにんげん研究会の講座で濱口監督をお招きした際、「<聞く>ことによる映画づくり」をテーマに『ハッピーアワー』の制作現場のお話を伺いました。「聞く」ことによるコミュニケーションは、互いに言葉を聞き合い、分かり合い、受け止め合うことを意識したものです。その中で信頼関係が生まれ、真に迫るやり取りを引き出すことができるのです。僕はこのお話を聞いて、自分がいかに相手の言葉を蔑ろにしていたか気づかされました。相手の言葉の表層をその人の全てだと思い込んで、対話をそこで終わらせてしまうことが度々ありました。「聞く」ことを通じて、その人と誠実に向き合おうとする姿勢が、コミュニケーションの本来あるべき姿なのかもしれません。みなさんも『ハッピーアワー』の鑑賞、そして濱口監督や演者の方々との出会いを経て、コミュニケーションについて新しい発見をしてみませんか?みなさんのお越しを心よりお待ちしています。

村上大樹鳥取大学 地域学部地域文化学科 芸術文化コース)

 

上映会&トークショー企画
にんげん研究会
鳥取大学地域学部の複数のゼミとゲストハウス&カフェ「たみ」を運営するうかぶLLCが共同して活動する研究会。地域社会の中で、ひとりの「にんげん」がどのように活動し、いかにして仲間を増やし環境をつくるのかについて、生活する人々の視点で、読書会やトークイベント、研究発表会などを行う。2017年度には、「地域と文化のためのメディアを考える連続講座#2」を開催し、濱口監督や他分野の実践者を講師として招いた。

 

 

鳥取大学地域実践型教育活動
「にんげん研究会『聞く』からはじまるコミュニケーション〜「ハッピーアワー」上映会&トークショー
主催:鳥取大学にんげん研究会
担当:村上大樹(佐々木ゼミ)、松本凌(五島ゼミ)
企画・運営協力:うかぶLLC、NEOPA Inc

 

6月14日 にんげん研究会レポート

 6月14日。松崎のゲストハウスたみでにんげん研究会がありました。今回の参加者は学生4名、一般3人の計7名でした。一般の参加者のうち一人の方はその日たみにご宿泊されていた方で、にんげん研究会に興味を持っていただき、飛び入りで参加していただきました。にんげん研究会はそんなふうに気軽に参加していただける敷居の低い研究会です。このレポートを読んでくださっている皆様の中でも、まだにん研に行ったことないという方は是非次回のにん研への参加をご検討ください!
 さて今年度にんげん研究会では、昨年度に引き続き「地域の記憶を記録するメディアプロジェクト」に取り組みます。「地域の記憶を記録するメディアプロジェクト」とは、「有名じゃない人」、「鳥取在住で何か物を集めている人」、「自分につながりのある人」へのインタビューを通じて、普段は特に取り上げられることもない地域の人々の生活の様子を記録しようというプロジェクトです。
 今回のにん研ではメンバーのウォーミングアップとして、メンバー同士でインタビューをし合い、その後口頭で報告し合うというワークショップを行いました。インタビュー時間は30分で、時間内にペアになった人と交互にインタビューし合いました。自分は昨年度もこのメディアプロジェクトに参加していましたし、「地域と文化のためのメディアを考える連続講座」も受講していたので、人にインタビューをして、それを「その場にいなかった人」に向けて発信するということはそれなりに考えてきたつもりです。しかし今回のウォーミングアップでは、発信する場にインタビュー対象もいるということで、不思議な緊張感の中でのワークショップとなりました。
 その後の感想では、「話の盛り上がり」というのが一つポイントとして上がりました。僕はインタビューとは一方的な質問の連続ではなく、相互的に言葉が交わされる対話の一つの形だと思っています。ですからインタビューするにあたっては、いきなりテーマに直接的にかかわる質問を投げかけるのではなく、対象のプロフィールなど基本的な情報を引き出す中で会話を温めていき、そこから何かテーマに関連する部分を見つけていくというのがよいと思っています。しかし会話の盛り上がるポイントとは必ずしもテーマとリンクするものではないので、話の方向をコントロールして、テーマに関するやり取りでもその盛り上がりを保ち、新鮮な言葉を引き出す意識が大切だと感じました。
 また発信するにあたっての編集の存在の大きさにも気づかされました。対象から聞いた話のポイントを組み立てなおして、結果的に美化する形に落とし込んでしまっていたり、整合性をとるために省略・構成しなおしていたりと、発信するまでには無意識のうちに数々の段階を踏んでいるのです。今回インタビュー対象として発信される場に立ち会ってみると、意図しない補足が入っていたり、話の順番を入れ替えて着地点が設けられていたりと、内容は僕が話したことであるはずなのに、かなり新鮮で驚かされました。しかし自分が話した内容を、他者のボキャブラリーや考えを通して改めて受け取ってみるというのは、自分が他者からどう見えているのかなど、新たな自分自身の姿を発見する良い機会だと思いました。
 さて次回のにん研ではそれぞれが地域の方にインタビューしてきた内容を報告し合います。インタビュー対象は「行きつけのバーのマスター」や「最近断捨離を始めた“松崎の神様”」や鳥取大学の教授など様々です。とても面白い報告会になりそうなので、まだにん研に参加したことないという方は是非お越しください。

(鳥取大学 佐々木ゼミ4年 村上大樹)

【次回の日程】
2018年7月26日@ゲストハウスたみ

5月17日 にんげん研究会レポート

 お久しぶりです。いよいよ本日5月17日(木)より2018年度にんげん研究会が始動しました。にん研とは鳥取大学地域学部の学生と一般の方々が一緒になって、自分の興味関心を、本を読んだり人に聞いたり話したりして調査し、その都度発見したことなどを自由に発表し合う、程よく緩くて程よくためになる研究会です。
 今回の参加者は15名程で、新しく参加してくださった方が半分以上を占めておられました。それに加えてゲストの方(後述)のお子さん二人も遊びに来られていたので、今回のにん研は新年度第一回目にふさわしくとても賑やかなものになりました。
 さて、そんな様子の2018年度第一回のにん研には、4月より鳥取短期大学に赴任されることになった渡邊太さんをお招きして、ご本人の自己紹介と、今興味があることについてお話していただきました。
 渡邊さんは鳥取に来られる以前、大阪で自宅カフェ「太陽」や「コモンズ大学」といったコミュニティづくりの場を作ってこられました。きっかけは、渡邊さんが過去に勤めていたある専門学校の近くに「太陽」という、民家をそのまま店舗として利用しているカフェを発見したことです。「太陽」には、当時の渡邊さんと同じく、少し不安定なお仕事をしておられる方や、引きこもりの方など、変な言い方をすれば、「世間から少しズレた人々」がさまざま集まる場所だったそうです。とは言ってもただ「変人が集まる場所」というよりかは「どんな人でも入り込める、受け入れられる場所」だったのだと思います。知らない人同士が同じこたつの中でコーヒー片手にぶっ飛んだ議論を繰り広げる。一見無くてもいい空間にも思えるけれど、今のように都市部で、何でもかんでも民営化されて有料化されている社会においては、無料でたくさんの人が自由に集まれる空間や広場というのはとても大切なものなのかもしれません。
 渡邊さんはお話の中で「空間のデザインによってそこで生まれるコミュニティの様子も変わる」と仰っていました。それを分かっているせいなのか、確かに渡邊さんはその場その場の空気を楽しんでおられるような印象で、ゲストハウス「たみ」で行われたにんげん研究会にもあっという間に馴染んでいたように見えました。
 そんな渡邊さんは鳥取に来てまだ間もないので、鳥取のコミュニティや芸術文化の様子についてはまだまだ模索中だそうです。今後の渡邊さんの動向に注目していきたいですね。(笑)
 さて次回のにんげん研究会は6月14日にゲストハウスたみで開催予定です。まだにん研に来たことないよって方は是非是非来てみてください。

(鳥取大学 佐々木ゼミ4年 村上大樹)