分科会「じぶんじしん・まち・えいぞうについて in よどや」報告

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 松崎駅から「たみ」に至る道程の途中にある「よどや(ギャラリーよどや)」。「いきいき直売よどや」や松崎自主防災会事務局として使われ、現在では松崎ゼミナールの教室にもなっており、幅広い年代の人々に利用されている交流施設のようだ。本分科会では、村上大樹リーダーのもと、鳥取大学生4名、立教大学生4名(1名欠席)、ICU生1名の計9名の発表が「よどや」で行われた。

 発表内容の一つの傾向として、「伝統工芸」「写真」「映画」「音楽」とジャンルはさまざまだが、芸術を対象としたテーマが多かったことだ。そこで交わされた議論は以下のようなものである。一つは「観光化」の問題で、地域の芸術イベントは「観光化」によって多くの人々を招くことができるかもしれないが、他方でその土地の伝統やコミュニティの破壊につながるのではないかという議論。また、「観客」や「参加者」についての話題が上がり、近年の参加型芸術イベントの増加について意見が交わされ、K-POPライヴにおけるファンによる撮影行為、「コナン」など映画館における応援上映2.5次元ミュージカル専用劇場の登場などの事例が挙げられた。この点について、イベントの参加者は、必ずしも運営側の意図とは異なる行為で盛り上がることがあり、それらをどの程度許容すべきか、取り締まるべきかという議論が交わされた。

 発表内容のもう一つの傾向としては、「じぶん」を動機としたテーマだ。「化粧」について、「たいせつなもの」についてなど、「じぶん」を動機に研究を出発しつつも、結果として他者へと関心が向かうものが多かった。こうした傾向の中でも異彩を放ったものとして、自分の失恋経験を小説(4万字!)および脚本化し映画製作を試みるものと、Twitter裏アカウントを利用して出会った人々に取材をしてDVや不登校援助交際などの人生を聞く、という二つの発表であった。ショッキングな内容を含むため聞き手の反応が気になったが、思いのほか学生たちは共感していたのが印象的であった。後者は、岸政彦氏の『断片的なものの社会学』(朝日出版社、2015年)の「ふつう」の人々の語りを聞くという研究方法から着想を得たようだが、別の発表者にも応用可能なアプローチであるといえるだろう。

 このように今回の分科会では、「じぶん」を契機として上手く研究に没入した学生が多かったことが良かったように思う。しかしながら、「じぶん」とはなにかを探求することで、研究への手がかりが必ず見つかるとは限らない。むしろ「じぶん」とはなにかを問うことで余計に「じぶん」がわからなくなることもあり得るだろう。その場合は、たとえば「にんげん」を考える場合、むしろ「非にんげん」について考えることで逆説的に「にんげん」の輪郭が浮かび上がることもあるように、「じぶん」を切り離して「研究対象」を考えることも一つの手であると考える。

 

レポート:筒井宏樹

鳥取大学地域学部 筒井宏樹ゼミ
美術史の研究室です。ゼミ生は巨匠画家を研究する人から、鳥取や地元の美術家を研究する人がいます。また美術だけでなく、音楽、マンガ、イラスト等を研究する人もいます。さらに、卒業制作としてアニメーション、音楽発表等の実践に取り組む人もいます。現在のゼミ生は岡本正文君。絵を描いたり、パウル・クレー研究をしています。岡本君が製作したLINEスタンプ「なんでも拾うよグローブちゃん」「角張うさぎちゃん」は只今販売中。