2020年6月18日にんげん研究会レポート

「ラジオっぽい日記」 鳥取大学 稲津ゼミ 三回生 志茂春菜

2020年6月18日(木)に、にんげん研究会(以下にんけん)が行われました。この日のにんけんでは、学生以外の方も参加をされており、県外から参加されている方もいました。

今回のにんけんのテーマは、コロナウイルスの影響を受け、オンラインで繋がることで新しく出会えたことや繋がれたこと、繋がれない状況の中で出会えたモノを日記として発表することです。日記の条件は、「テーマがわかるタイトル」と「日付」をつけて書くことです。学生が書いてきた日記に対して、コメンテーターのうかぶLLCの蛇谷りえさん、写真家の金川晋吾さん、アニメーション作家の今林由佳さんがコメントをされていました。今回は9人の学生が日記を発表しており、それぞれの日記の発表は3分で読み上げられ、コメンテーターの方からの質問と感想を合わせて10分で行われました。

 

日記では、内容はもちろん文章の構成や話し方まで様々で、クスッと笑える日記や共感する日記、なるほどと納得する日記など、どの日記にも個性が表れていました。学生が発表した日記を全てのせたい思いだが、当日発表された流れでここに簡潔に紹介します。

 

最初に発表されたのは、井田遥さんです。タイトルは「タマネギマン」で、2020年6月15日に書かれたものでした。井田さんは、自粛中の散歩や自炊を行う様子について発表されました。散歩の場面では、毎回同じルートをだいたい決まったプレイリストで散歩をするため、家でプレイリストを聞くときに「この曲はあの辺の道だな」と分かると言ってました。自炊の場面では、タマネギを切る時にラップを取り出し、それをヤッターマンのように目に覆ってタマネギと戦う様子について発表されました。この様子に対して蛇谷さんは、大笑いされていて、蛇谷さんには、ヤッターマンがヒットしたようでした。コメンテーターの方々の笑いを誘った日記は、少し緊張感が漂っていた雰囲気を吹き飛ばしたように感じました。

 

次に発表されたのは、山崎七重さんです。タイトルは「友達との距離」、2020年5月2日に書かれたものです。山崎さんは、24時間もの間、三人の友達と通話を繋げるというチャレンジをしたことについて発表されました。24時間の通話で、音だけで友人が何をしているのかが分かるようになったそうです。今林さんと金川さんから、「若いからできることで自分たちの時代と環境が違う」と笑いながら、コメントされてました。

 

次に発表されたのは、内田はるねさんです。タイトルは「家族と物資とわたし」、2020年5月30日に書かれたものです。この日に家族から食料などの物資が届いたことをきっかけに、コロナウイルス影響下での自身の生活についての振り返りを発表されました。コロナウイルスの影響を受け、実家に安易に帰ることができず、今まで当たり前だった家族との時間の大切さについて語られました。今林さんからは、「コロナウイルスのことが分かるドキュメンタリーとして、将来まで残してほしい」とコメントされてました。

 

次に発表されたのは、宮北温夫さんです。タイトルは「日本経済新聞を読んだ」、2020年6月17日に書かれたものです。宮北さんは、新聞の配達員が運んできた新聞から、コロナ・ショックにおける学生の姿について分析を行っている様子を発表されました。金川さんからは、「ZOOMのアバターがイヌなのに分析的な日記で笑ってしまう」とコメントされてました。

 

次に発表されたのは、渡辺大志さんです。タイトルは「ランニング」、2020年6月9日に書かれたものです。渡辺さんは、運動不足解消のためランニングをしている途中で友人と会った時の出来事について発表されました。友人に対して就職活動やゼミ、卒業論文など話したいことが積もるほどあった様子についても発表をされました。そんな中で、ふと上を見上げた時に見た景色についても語られました。今風に言うと「エモい」みたいな感じの景色である。金川さんは、「心地よい出来事について書いている」とコメントされてました。

 

ここで、休憩が入り、休憩中も様々な会話が飛び交っていました。その中で鳥取大学地域学部の教員を務める家中茂さんは、前半の日記の発表を自分のカメラとマイクをオフにして、「ラジオっぽい」感覚でご飯を食べながら聞いていたと言ってました。私も家中さんと同様にカメラとマイクをオフにして、お茶を飲みながら日記の発表を聞いていました。後日、聞いた話しだが稲津ゼミでは、半身浴をしながら聞いている人や発表者を画面越しに見ながら聞いていた人、猫と葛藤しながら聞いていた人、ドキドキしながら自分の発表を待ちながら聞いていた人がいました。画面の向こうでは、それぞれがそれぞれの聞き方で日記を聞いていたのだと思いました。

 

休憩が終わり、交換の日記の発表になりました。前半もコメンテーターの方々の質問と感想が盛り上がっていたため、休憩をはさんだ後からは時間が押し気味に進行されました。

 

後半の最初は吉田豊さんの発表です。タイトルは「東京」、2020年6月6日に書かれたものです。吉田さんは、日本に旅をしに来たニュージーランド出身の人や大学のために日本に来たドイツ人など東京で出会った、日本にとどまる人々との会話を通して、コロナウイルスと戦いながらも楽しんで生きている人々について発表されました。コメンテーターの方からは、「人と会うことでコロナ化を感じさせられる日記である」とコメントされていました。このコメントの背景には、吉田さんの自分のことを日記でどこまで書くかという悩みがあったそうです。「自分のことではなく、人を通してコロナ化を描いていることで、共感できた」という声もありました。また、「宮北さんの分析的な日記とは対照的である」という意見もありました。

 

次に発表されたのは、増岡祐子さんです。タイトルは「どぶろくは生きている」、2020年6月15日に書かれたものです。増岡さんは、友人の家で飲んだどぶろくのラベルに書かれた言葉から、コロナウイルス影響下の人間の様子について発表されました。人間が自粛をしている間もどぶろくは発酵をしているという意味で「生きている」のか。はたまた本当に「生きている」のだろうか。人間の生きている感覚とは少し違う「生きている」ものとの出会いが、友人とのやり取りを交えながら描かれていました。

金川さんからは、「手紙を書いた人だよね?(昨年末の成果発表会で靴屋さんに向けて手紙を発表されていた) 日記でも一つ一つの物の配置まで書かれていて描写が見える」とコメントされていた。

 

次に発表されたのは、山下紗世さんです。タイトルは「体温を測る」、2020年6月18日に書かれたものです。山下さんは、コロナウイルスの影響で体温と向き合う習慣ができたことについて発表されました。いつの間にか消された、大学から配られたExcelファイルの健康記録表。Excelファイルを本人が消しているにも関わらず、日記を書く際に当の本人は忘れていることなどに対して、金川さんは「この日記を聞いて『茄子の輝き』という本を思い出した」とコメントされていました。また、今林さんからは「瓶に詰めて海に流してほしい」という声もありました。

 

最後に発表されたのは、落合麻衣さんです。タイトルは「身近な人とのつながり」、2020年6月1日に書かれたものです。落合さんは、コロナウイルスの影響下での友人とのつながりや友人と自分の生活リズムの対比などについて発表されていました。また、本当は友人と連絡をとりたいが、断られた時にショックを受けるため自分からはあまり連絡をしなかったが、ZOOMというアプリを使用することで以前より、自分から繋がろうとすることが増えたと発表をしていました。そのため、「人間関係わかるわ~」という声があり、リアルな生活を描いたからこそ、共感できる部分が多かったのだと思いました。

 

以上が発表された日記です。全ての発表を聞いてコメンテーターの方からは、「人に対して日記を発表するため、人に理解してもらうような文章を感じる」と言ってました。また、「日記を人に発表するということで、自分の気持ちの部分をどこまで書くべきなのか」という声もありました。日記とはなにか?という議論が今回もされていました。前回の議論では、日記とは自分の思いを書くものであるという意見や他人の目を気にせずに書いたもの、文章を書くことは他者の目に触れる可能性があるものであり、他人の目を気にするべきものといった考えがあったが今回、金川さんからは「次回は○○をした。○○をした」というような人に見せないことを前提で書かれた本来の日記のようなものを書いてほしいという意見がありました。また、今林さんからは、「日記の主人公が何をしているか様々な角度から描いたらどうか」というアニメーション作家からの視点でアドバイスがありました。

引き続き、にんけんでの日記とは何かを模索していく必要があると考えました。今回の議論を踏まえて、次回の日記で自分がどのような書き方をするのか、他の学生がどのような日記を書くのか楽しみです。

 

今回、私は身近な大学生の日記を初めて聞きました。人の日記を読むということは、あるかもしれないが、聞くということは滅多にないことだと思いました。また、テーマはコロナウイルスの影響下での日記であるため、それぞれがコロナウイルスと向き合わざるを得ない中で生きていてるのだと感じました。

にんけんで日記を書くことは、コロナウイルスの影響を受けて、以前は当たり前だったことが当たり前ではないことやコロナウイルスの影響前と変わらない当たり前の現状もあることなど自分の周りでの出来事に気付くきっかけや考えるきっかけになると感じました。日記を書くことで、友達や家族との関係、自分の気持ちなど自分自身や自分の周りを見つめ直す機会になるのではないかと思います。今後、日記を書いていく中で、どのような気づきを得ることができるのか楽しみであり、それに見合う時間を注いでいくべきだと思います。

 

金川さんが最後に「日記とは、自分の思ったことを書いていい。優越のない世界である」とおっしゃっていた。この、平和な時間を次回も気合いを入れて臨もうと思います。