2020年8月20日にんげん研究会レポート

2020年8月20日(木)第四回にんげん研究会(以下にんけん)が行われた。今回のにんけんも鳥取大学の学生だけでなく、大学外部からの参加もありました。

 今回の発表は、鳥取大学の学生が7名、外部の方2名の日記が発表されました。発表は前半4人、後半5人に分けられて行われました。ここでは、今回のにんけんで発表された流れに即して、学生の発表の要約とコメンテーターからのコメントを記していきたいと思います。

 

まず発表をしたのは、盛田実優さんでした。日付は8月19日でタイトルは「だいたいコロナのせい。」でした。実家で起こった不幸なことをすべてコロナのせいにしてしまおうという内容でした。コンビニの透明なカーテンで店員さんと会話ができないこと。オンライン授業が増えたことで眼鏡をつける機会が増え、ニキビができたこと。母が作る煮込みハンバーグの中にワカメが入っていたこと。など、実家で起こった不幸をコロナに擦り付けている心情を記した日記でした。

金川さんからは、宮沢章夫のエッセイを読んでいるようで面白く、人に見せるのを意識していて論文調で書かれており読み返して面白いもの。蛇谷さんから、コロナのせいにすることは、コロナの状況を受け入れるためなのか、それともコロナに対して感情をぶつけるものなのかという質問が出ました。それに対して、盛田さんは、イライラをコロナに投げつけるために書いたということでした。今林さんからは、家族を客観的に見る視点があったというコメントがありました。

次に発表をしたのは、渡邊乃愛さんでした。日付は8月3日でタイトルは「汽車であれこれ」でした。湖山駅から米子方面に向かう中での風景を見ながらの渡邊さんの海へのあこがれや、鳥取の風景への気持ちなど地元と比較しながら、自分の内面を描いた日記でした。   金川さんからは、現在と過去を文章が行ったり来たりして、時制が変わるのが不思議な感覚だった。蛇谷さんからは、自分独自の視点から語られており映画の主人公の話を聞いたようだった。今林さんからは、自分の好きなものを一言で終わらせず、自分の内面を描きながら表現する緻密な表現がすごかったというコメントがありました。

3番目に発表をしたのは、小林あまねさんでした。日付は8月20日でタイトルは、「お泊り会初日の夜」でした。友人の家にバイトが終わった後訪れた小林さんは、友人の実家から送られてきた食べ物のことや、友人と野菜を切ることやゴーヤチャンプルを作っている様子、そうした中での会話などが描かれた、日常について書いた日記でした。

蛇谷さんからは、学生のリアルな日常が見えた。金川さんからは、日記を通して、たわいない日常が見えるのは面白い。今林さんからは、文章の中で描かれている場面について、時間や友人のキャラクターなど読む側に面白いと思わせる要素をもっと入れるともっといいというアドバイスやコメントがありました。

 前半最後に発表したのは、武田知之さんでした。日付は、8月16日タイトルは、「回転寿司」でした。回転ずしが自分はどれだけ好きなのかということを、理由をいくつもあげて紹介していた。友達との食事に最適であること。サイドメニューやご当地コラボメニューがたくさんあり楽しいこと。デザートもおいしいことなど、開店寿司が好きなことについて書かれている日記でした。

金川さんからは、聞いたことがある話のように聞こえて、心情の部分で個別性が見られる話しや表現の工夫があるとよかった。蛇谷さんからは、文章で読むときと声に出して読むときでは印象が違ってくる。武田さんも、テンポよく読めるように文章を作ったと言っていました。今林さんからは、金川さんのコメントに付け加えて、自分の日常哲学を入れていくとよりよかったかもなどのコメントがありました。

休憩を一度はさみ、後半の最初に発表をしたのは、原田耀士さんでした。日付は8月20日タイトルは、「カンパチを救え!」でした。初めに、友人から高知のカンパチがコロナウィルスの影響で不振になっていることを知ったことが介された。その後、原田さんは、カンパチを注文し、カンパチの食べた感想を具体的に書いた日記でした。

蛇谷さんからは、原田さんが学生であるのに、話し方のテンポやトーンが大人のように聞こえたので、ギャップが面白く、蛇谷さんが初めに、何歳ですか?という質問をして、コメンテーターの間で笑いが起こった。金川さんからは、男の子が書く文章がおっさん化している。会社の話をしちゃう感じで、自分のことをすっと出せない。男の人が、構造的に自分のことを話せない、などのコメントがありました。

次に発表したのは、永島優太さんでした。日付は8月20日タイトルは「社会を忘れて世界の片隅に立つ」でした。趣味のランニングに行こうとするときの大家さんとの会話や、ランニング中の夕日などの外の景色を見ることで、永島さんが考えている心情が描かれている日記でした。

金川さんからは共感できる文章であった。私は、好みの問題かもしれないが、孤独を感じるものにグッとくる。今林さんからは、人間のカギをしていたい心の引き出しを少しずつ見せる感じの文章で面白い。蛇谷さんからは、自分の性格を書いているところが二面性のギャップが見えて面白い、などのコメントがありました。

後半3番目に発表をしたのは、浅尾桃衣さんでした。日付は8月19日タイトルは「特別な曲」でした。浅尾さんの特別な曲、Aqua Timezの「生きて」について、曲の中の歌詞を紹介しながら、浅尾さんが共感をしてふるいたたされていることを、自分の性格や今までの行動と照らし合わせながら書いている日記でした。

蛇谷さんからは、蛇谷さんは、浅尾さんの普段の様子について質問をした。浅尾さんはそれに対して、自分自身ばかりに興味を持つことがあり、他人に甘えているかもしれないという返答をした。それに対して、蛇谷さんは、甘えんぼでもいいんじゃないかといった会話が展開された。金川さんからは、普段日記をつけていない人の日記を見れてよかった、などのコメントがありました。

4番目に発表をしたのは、児玉泰地さんでした。日付は8月20日でした。断捨離をしている児玉さんのもとに友人の父親から梅干しが届いた。そこから、友人が死んだことや、過去の記憶を思い返している場面から、現在へと意識が戻ったその後の行動の様子が描かれている日記だった。

金川さんからは、具体的な景色を書くことで、こちらの内面に触れてくる感じがあっておもしろい。男女関係などのことを書いてくれると共感できることがあってよかった。(蛇谷さん)児玉さんの文章は、感想で言えることが迷うが、感覚に訴えてくるものがあった。というコメントがありました。

最後に発表をしたのは、谷口茉優さんでした。日付は8月16日でした。谷口さん含め5人のメンバーとともに、作品発表ができるオルタナティブスペースとして使える空き家を借りているそうだ。そこの庭にある植物について興味を持った谷口さんは、植物図鑑を抱えて、植物を調べた。そこで、植物の中に前の住人の痕跡を見つけた谷口さんは、時間の流れを感じ、人と植物の時間の流れの差をあることに事に気づいた。こうしたような、庭の植物を観察しながら、谷口さんが感じたことが書かれている日記でした。

金川さんからは、時間の幅が感じられた。蛇谷さんからは、興味が移り変わっていく様子が面白い。文章として、もう一度読み返したい。今林さんからは、社会の中にあるモノゴト、外にあるものを谷口さんがキャッチしているのが感じられて面白い。などのコメントがありました。

 

以上が今回のにんけんで発表された日記でした。読み方を工夫している人や、情景を細かに表現する人など、様々な形の日記があり興味深かったです。私は、にんけんの場での日記のあり方がどんどん変化しているように感じました。第二回では、日記は、発表を意識しない文章を書くこと。第三回では、声や話し方によって、文章が違って見えてくること。そして今回は、性別の違いなどに触れながら、自分の内面を表現することに関してコメンテーターが議論していた。今後、発表者は、にんけんの場で議論されたことを意識しながら書いていくことになるでしょう。「自由に書いてもいい」という日記が、にんけんの場では、少しずつ変化してきているのではないかと感じています。コメンテーターの間でも、「日記とは何か?」について悩んでいることが話されていました。私も、今後にんけんの場で「日記とは何か?」ということを発表者としても、読者としても両方の面から考えていけそうです。

今回で、にんけんに参加している学生メンバー全員が発表を終えました。一巡目の発表が終わったことで、次の発表では、これまでの日記を意識しながら書いていくことになると思います。私自身も、前回コメントをもらったことも意識しながら次回の日記を書きたいと思っています。コロナの状況下で、当たり前にできていたことが普段の生活レベルでできなくなっています。ですが、にんけんの場で日記を読むことによって、他の人の様子を知ること、現状でできること、あるいは、できないことに気づけています。それを通じて、自分自身の家族や友人、周りの環境の様子などを振り返る貴重な体験に時間をかけられていると思います。

この前、実家に帰省した際に友達と会いました。会ったことで、現状を知ることがありました。今度の日記では、その時のことを書いてみようと思います。

鳥取大学 稲津ゼミ 三回生 福田健太郎